平成30年政令都市東京事務所所長会資料の残念感

座学と印象だけで資料をまとめた疑惑

下図は「平成30年政令指定都市東京事務所所長会」の「国のクールジャパン戦略の最新状況 〜クールジャパンを活かした地域づくり〜」12ページを抜粋したものである。
参考:内閣府知的財産戦略推進事務局 クールジャパン戦略

リンク先のプレゼン資料を一読すると、“輸出できる物を作る”ことと“現地に来てもらうアトラクションを作る”ことを“推進しなさい”。さらに地域で広報をしなさい。そのための一般会計予算の内訳を公開し、代表的な取り組みを紹介しておく。と、大まかにはこのような内容だ。方針の説明資料だが、この資料を基に政令指定都市ではおそらく何等かのアクションを起こす。そのための基礎的な資料になるはずだが、大きな問題点をはらんでいることは、ネット上でも数多く指摘されており、まさにその通りなのだが、いまいち何が問題点なのかハッキリしていない。

そこで筆者なりに資料を読み込んでみた結果、資料12ページに問題点が集約されていることに気がついた。このページの文言、みんなボヤっとしすぎだ。当然多くの人もそれに気がついている。

自分の関わっている分野について突っ込んでみる。“茶道”、“伝統工芸”、“着物”がそれにあたる。まずこの3点がどのように関連しているかを理解していない。そのうえ、“茶道”が“禅・武士道”よりも“深遠”に位置していることからも、茶道や禅を体験したことのない者が適当に印象だけで配置していることを表している。

ここで大切なのは位置ではない。資料制作者が空想を基礎にしてまとめた資料であるということだ。つまり前提が空想である以上、この後に出てくる数値も裏付けにはならない。都合の良い数値を持ち込んだだけだ。

伝統工芸品の顧客は茶道や華道をたしなんでいる割合が多い。その他の顧客は仏壇・仏具関係、寺社仏閣(宗教)関係だ。特に華道は花器をそろえるために、先生・お弟子さんとも、塗物(漆など)や焼物(陶磁器)を買い足す場合が多い。茶道の場合は着物、茶道具の類を、特に教室を開いている先生方が大口顧客だ。それぞれ関連が強い分野であるとともに、先生方の高齢化にともなう教室の閉鎖も相次いでいる。この事が何を意味しているのか全く理解されていない。

まず華道教室よりも茶道教室の方が伝統工芸分野に伝わる影響は大きい。茶道教室は“茶室”という物理的な空間が必要だ。野点はあくまでも仮設の茶室を屋外で作るのであって、基本は屋内である。多くの茶道教室は先生方の自宅に、大なり小なりの“茶室”があり、そこで稽古をつけ、季節ごとの茶行事なども開催している。つまり、教室が閉鎖するということは、この“茶室”が使えなくなるのだ。問題は茶室だけではなく、道具にまで及ぶ。こちらのほうが問題は大きい。茶道教室に通っているお弟子さん達は自ら道具を持っているわけではない。茶道具は範囲が広く、種類も多い。建築資材から鋳物、金物、陶磁器、木竹製品、紙製品や衣類にまで及ぶ。共通規格はないため、専用道具となるものもある。こうしたものを製造・販売していた伝統工芸分野は現在影響を受けている。また流通の仕組みにも無理が生じている。

茶室を継ぐ後継者がいれば良いが、現状そうはなっていない。理由はさまざまだろう。そもそも団塊世代で茶道が流行し、当時弟子だった現在の先生達はマイホームブームと重なり、自宅に茶室を作った。そのため茶道具が大量に必要になり、工芸品の大量生産が必要になった背景がある。このころに問屋を介した流通の仕組みもできあがった。最終顧客へは教室の先生から手渡される。この仕組みと共に茶道教室が異常に増加した時代があるのだ。これは華道教室にもあてはまる。茶道教室を開いている先生は同時に華道教室も開いているケースが多い。また着物業界も同様に高価格路線へ走った原因のひとつに、茶道教室の増加があったことが大きく影響しているだろう。この結果、茶道具類の押し売りにも近い構造ができあがり、呉服店の異常な高価格商品ごり押し体質につながっているとも考えられる。

このほかにも漫画・アニメ、ゲームに関する分野でも、空想で語っていることはもはや疑う余地は無いだろう。WEDGE Infinityの記事“「壊滅状態」のクールジャパン戦略につけるクスリ”でも語られている。

こうした背景を無視し、基礎資料として持ち出していることはとてもまずいだろう。この先、どのような形で公金が投入されるか先がまったく見えないばかりか、従来のやり方を改革をしている伝統工芸関連の小さな芽をつぶしかねない。

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