プロダクツが流出(リリース)するまでの変化を考えてみた

行雲流水−今の時代を表しているように感じる。

起業塾・創業塾に行くと、多かれ少なかれマーケティング、市場規模、独自性の話等で構成され、それらを視覚化するためのツールの紹介やワークショップが多く開かれている。筆者もいろいろな起業塾に参加する機会があり、大抵はこのような内容であとはワークが幾つか増えたと記憶している。

ただこの構成は価値創造と言いながら、マーケットが事前に存在するという前提に成り立っているため、一定規模の既存事業が存在しているところへの新規参入か、新規下請け参入を目指す人向けに錬られたプログラムである。多くの場合「隙間」を狙い定めていかねばならず、少しズレるとうまく嵌まらないばかりか、はじかれてしまう。

また、最近よく聞かれるようになったUXデザインというセクションがプロダクツの現場にも落とし込まれるようになったが、既存の開発スタイルの中にはめ込むのはなかなか難しい。

下図はプロダクトがリリースするまでの流れを大ざっぱにまとめたものだ。全てがこのモデルにあてはまるわけではないが、違いに気がついてもらえればそれで良い。従来型は製品として誕生した時点を境に、上工程と下工程に分かれている。しかし、今後主流になりそうな流れは上工程と下工程の堺がハッキリしていない。無理矢理考えればローンチが上下の堺とも考えられるが、ローンチ後もブラッシュアップや派生プロダクトの開発なども考えられ、従来下工程だったPRセクションの重要性が薄くなる。

モデルの違いで最も影響するのは「稟議」だろう。その結果速度差が生まれる。従来モデルの場合は少なくとも開発工程・販促工程で分けられたため、それぞれの部署で上司の稟議をもらいやすかった。場合によっては会社自体が分かれているので、開発側はPRのことなど気にもしなくて済んだ。そして開発側の専門職と販促側の専門職は分かれており、このセクションを横断して統括しているのは経営セクションくらいだ。また、最終的な目標が設定されており、それが売上金額や出荷数、利用者数だったりとさまざまだが、目標その物が評価対象であり、製品は評価の対象ではない。

たとえば開発エンジニアとデザイナー(UIなどソフトウェアも含む)が上工程、メンテナンスサポートエンジニアと販促デザイナー(主にグラフィックやWeb)、営業が下工程であり、両者は密に連絡を取り合うことはあまりない。そして決定した目標値(主に出荷数)によってのみ、製品の善し悪しが決められ、ディスコンされるのか存続するのかといった判断に活かされる。このため製品自体が世の中に出た後の影響を考慮されていないことが多い。

ちなみに、様々な人から筆者の仕事が謎と言われるのも、従来型の流れの中でどのセクションを担当しているかわかりづらいからであると考えている。一応関連しているものに◎をつけてみた。このほかに全体の流れ管理なども入る場合があり、上下工程をまたいでいることが多い。

しかし実際にやっていることは、最近の流れの中でUXデザインのほんの一部であり、主は体験設計のまとめ役である。資料を探したり、アイデアをまとめたり、ストーリーを明文化したり、イメージボードを作ったりといった雑務に近いことで、開発その物をバックアップしている。UXデザイナーと名乗れば良さそうなものだが、それはそれで勘違いされる。どちらかといえばナビゲーターとかコーディネーターの方が近い。

さて少し脱線したが、ポイントがある。筆者は新しい流れの中に於いてはとても小さなセクションの一部だが、従来の流れの中では様々なところに少しずつ絡むという状態になる。この場合、少しややこしくなるのが請求書を廻す部署であり、窓口のセクションがどこになるのかである。たいていの場合、PR(広報部など)に関連する側からのオファーが多い。その場合、開発側へ影響する意見や資料を提出できなかったりする。PRのセクションが完全に外注だった場合など、開発中の情報は漏洩御法度となるため、製品が誕生するまで全容はおろか、開発目的も掴めない場合が多い。

この事が何を意味するのか。

モノを作り、販売することで利益を出してきたモデルから、コトを体験し、時間や空間に対して対価を払うというモデルへの変化に対応ができないのだ。

 

多くの企業が稟議システムをとっており、専門部署が分かれている組織体制を維持している。新しい流れはその組織を横断しなければならないし、中間稟議など通しているような隙間は無い。この変化は高度成長期を経験してきた経営者には実感がしづらいそうだ。今までの仕組みでは下請け構造なので、指示待ち体制・責任分割体制がハッキリしており、チェックすべきところ、判断基準なども慣例があり、言ってみれば楽に運営できた。

ところが、新しい流れでは従来の責任分割リスクヘッジも、指示付き下請けオファーもない。自ら判断してどのように参加して、どこでマネタイズをするのかを考えなければならない。そのため、小さな個人や会社同士のプロジェクトはうまく行く傾向にある。開発段階からUX設計を入れられるし、開発しながら不具合を見つけられ、解決していける。さらに開発段階で情報がある程度Openにすることで、広報もここで同時に行うことができ、様々な形で参加者を募ることもできる。

人口減少となっている時代、自社囲い込みで何かを作って行き続けるのは茨の道だろう。今はちょうど過渡期に入っている。流れに逆らわず、正しい「コト消費」を考えていくために必要な構造改革を考えなければならない。

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