点前と畳とグリッドシステム

点前と畳とグリッドシステム

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茶道をやったことのない方は、茶道具の配置が細かく決まっていることをあまり知らないと思う。なんとなく知っていても、畳みの目の何本目、縁から何センチとか決まっているまではどうだろうか。

たとえば、表千家流点前(表千家流点前 〔正篇〕(茶道文庫 (1))/吉田 尭文 著)には下図が掲載されている。

表千家流点前より

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裏千家のWebサイトには下図が掲載されている。(お家元と 一問一答より/裏千家ウェブサイト)

[blogcard url=”http://www.urasenke.or.jp/textm/headq/soke/ichimon/ichimon01an.html”]

これらは一例だが、道具を置く位置は細かく指示されている。なぜここまで細かく指示されているのかを考えて欲しい。ひょっとしたら茶道教室に通っている方もそこまで意識せず、「決まっているから」とその位置に置いているかもしれない。

家元がどのような意味で位置を指示しているのかは、直接確認していないためわからない。ここではレイアウトデザインの目線で見てみることにする。
(図参考/表千家「茶の湯 こころと美」の「茶を点てる」より)

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図のように道具は亭主(迎える側)が座る場を中心に配置される。客側は茶室に入ってから「お道具拝見」という所作を行うが、この時どこから見ても良いわけでは無い。youtubeリンク先動画のはじめから2分30秒辺りまでがその所作である。

[blogcard url=”https://youtu.be/fmukjUoevf4″]

この時道具類を見ることも大切だが、レイアウトデザインを行う者の視点から考えると、「自然に全てが視界に入るよう、オブジェクト(道具)が配置されているか」が大切な要素となる。グラフィックデザインの場合0.1ミリ単位で(場合によってはもっと細かく)調整をする。画面や紙面のフチから相対的なオブジェクトごとの位置関係を自然に見せ、目立たせたいオブジェクトを自然に目線へ入れるようにするためだ。この時、わざと微妙にバランスを崩すこともレイアウトテクニックの一つでもある。

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この考え方は「グリッドデザイン/グリッドシステム」と呼ばれる。スマホの画面にアプリのアイコンが規則正しく並ぶのも、サイン(案内看板など)の配置も雑誌の文章も基本に沿っている。

道具の配置はこのグリッドシステムと酷似している。さらにグラフィックデザインより難しい要素として、三次元での配置、複数位置からの目線を意識しなければならないことである。おそらくであるが、お道具拝見の所作では決まった位置から道具を見ているのは、見る側への制限だと考えると腑に落ちる。ちなみに座る場所も細かく決められており、道具より相対位置8寸離れた場に落ち着く。

ある位置から見た場合、最も自然に、美しく見え、その日のテーマを示すオブジェクトを目立たせる配置。

畳み目をグリッドと考え、所定の位置に配置させることで、誰が見ても一定水準の美を確保していると言える仕組みだろう。ただここで気をつけなければならないのが「畳の大きさ」である。家元は「京畳」というサイズで指示している。一般的に関西では京畳(本間)で6尺3寸×3尺1寸5分。関東では江戸間で5尺8寸×2尺9寸。中京では中京間6尺×3尺。近代ではメートル法で部屋が施工されるため、そこから割り出した寸法に畳は変わる。京畳の場合、畳み目は64と決まっているがサイズが変わった場合、畳み目は変化する。また廉価版の安い畳を使う場合もピッチが一定で無くなるため、ズレが出てくる。

つまり「お道具拝見」を通してみられる情報は多々あり、亭主側はこれらをどのように扱っているかで、人柄や正確を読み取ることもできる。また配置バランスの美感覚を会得すれば、微妙なバランスの崩れを読み取ることもできる。馴染んでくれば感覚で規定の場に置くことができるようになる。茶道教室ではそうしたことも練習するわけだが、デザイン理論と組み合わせて訓練すれば、バランス感覚が身につくだろう。

余談だが、道具から座る位置は8寸離れたところという数値、また畳み目の64など、現代のモニターサイズにも同じような関係がみられ、すべて「8」で割り切れる数字になっている。(Wikiより)

グリッドシステムにおいて「8」の倍数でグリッドを設計していくと、見た目に整ったデザインを組むことができる。

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畳をグリッドとしてとらえれば、デザイン目線で座る位置、お菓子を置く位置、茶碗を置く位置、扇子を置く位置などの意味合いと、茶室全体の空気感を読み取れるようになると思う。また平面と違い茶室には壁もあり、庭もあり、天井もありと立体空間なので、当然畳のグリッドだけでは語れない。それらが複雑に絡み合う空間を、グリッドシステムがどのように役立てているのか。そうした視点で茶室を見るのもまた面白いと思う。

和雪庵なら気軽にその視点で眺めてもらっても良いし、あえて別の視点から眺めてもらってもかまわない。

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