茶室に座り続けることでわかってきたこと

和雪庵茶室

茶室は「美」に関する許容範囲が狭くて、深い。

そこで使われる道具を、置かれている空間とデザインの視点で見てみると、存在していても違和感があるかないかの許容範囲がとても狭く、しかし表現の手法はとても深いことに気がつく。サイズや造形、マテリアルや表面スキンなど、組み合わせは無限に近いほどあるが、僅差の範囲に留まると思われる。

これは茶室が初期につくり出している、ある種完成に近い一定の空間に、さらにものを増やすことで生じるバランス感覚の問題だろう。いわば余白が狭いと表現しても良さそう。
事がバランス感覚なだけに、絶対的な指標は見いだせないため、鍛えるほかに方法はない。つまり、ある程度会得すれば、その感覚は相対的に他者との差になる。

経営者は茶道を習えとは良く言ったものだ。近年言われる「美の感覚」とは、こうした空間の中で違和感をとらえる僅差を積み重ねた感覚のことを言うのだろう。

文章ではわかりにくいので、幾つか図を用意した。

棗

水差し

鋳物の猫

茶碗

九谷香炉

瀬戸ねずみ

茶道具ばかりではないが、そこに置いてあって違和感があるかないかの線引きが「センス」になるのだと思う。線引き基準は金額でなければ、箱書きや折り紙でもない。

もう少しハッキリわかる例も撮影してみた。

スノーレッツのカップ天使カワック(ぬい)どんぶり山崎の白い皿陶器の猫小鉢九谷金魚

あからさまに違和感を感じるものをチョイスしたが、こうしてみると茶道具は大きさ、シルエット、素材など、いかに長い時間をかけて基礎となる形ができあがってきたのかを感じる。近年量産されるものには、良くできているが、やはりどこかに緩さを感じる。感じ方に差が生じるのは絶対的な答えが無いからだろう。相対的な差も実は紙一重だと思う。またドンブリの例のよう「見立て」の感覚も、用途外のものを持ち込んだ場合、見事に外していることがよくわかる。見立てこそ通常よりもセンスを使う。

なお、写真の暗さは実際の茶室の暗さとほぼ同じイメージ。

近代の部屋造りと許容の関係を考える。

近代の部屋がつくり出す空間完成度が許容を大きくしてるのではないだろうか。下図はフリー素材から拝借してきたリビングルームである。この部屋でもある種の完成度は高い。しかし、空間の構成要素に余裕があるため、ゆったりした空間にも、ギッチリした空間にも振ることができる余裕がある。余白の多さを感じるのは、空間の陰影が少なく、白い紙でありつつ、一定の区切りが存在するからだろう。

同様に近代和室を見てみる。こちらも洋室に比べて余白が少なくなるが、茶室より余白がある。ここに箪笥を置いてもさほど違和感は出ないだろう。洋室に比べると余白が狭く感じるのは「畳縁」の仕切り。しかし、壁面に仕切りが少ないため陰影がなく、一定の区切りがあるので、こちらの空間も何も無い状態となにか置いていく空間と、どちらにも振ることが可能。

近代和室

古民家でも同様で壁面が漆喰の場合、許容は比較的大きい。ただ、歴史による汚れなどの陰影が影響するため、置かれるものに制限は出てくるが、茶室ほど制限はない。また一定の区切りが存在するため、例え洋風のものが置いてあっても、歴史感(アンティーク感)が漂えばさほど違和感は無いだろう。

和室(四畳半)

寺院などの空間は余白が一気に狭くなる。ここに洋箪笥は置けない。むしろ、余分なものは置けない。また置かれるものの制約が一気に増える。理由を考えてみると、日本家屋に特有の外と内の「区切り」が暈けていることが影響しているのだろう。さらに、尺寸法で作られた仕切りのサイズ感がバランスを作り出していると考えるのが妥当。

しかし昭和の扇風機はここに置いても違和感が無い。当時のデザインをもう一度見直す必要もありそう。

寺院空間

これらの例を見てみると、どうやら空間を構成するマテリアルとサイズ感の組み合わせで発生する「陰影」が影響しているとも思える。

聚楽壁

和雪庵の茶室壁面は砂壁で暗め。砂壁は歴史を重ねることでしか出せない風合い(キズや自然変形による陰影)がある。壁が作られてから100年ほど経っているが、その間塗り直しが1回あったことは調査によって判明しており、今の壁は約50年経過している。その間、和雪庵の建物はこれまで3家族が入れ替わっている。当家で4家族目だ。それぞれの時代についた傷や変形が今の茶室空間を作り上げている。時間経過だけでは作られない、過去を感じさせる空間は生活が伴わなければできあがらない。

こう考えると、現代住宅の建材は時間の経過という観点ではただ「汚れる」だけのことが多く、やはり消耗品なのだと思う。サンゲツをはじめ、壁紙メーカーもそろそろこの事に気がついて、生活と時間によって経過する壁紙を考えていくべきなのかもしれない。

和雪庵

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